top of page
18:30〜18:45
Twilight☆Tunes

【ローテク日記#6】AI天気予報を作ってみた(中編)〜「雨。で、」果てしなき日本語の戦い〜

9月15日
読了時間: 4分

エフエムゆめウェーブ浅口スタジオの「K」です。 当ブログでは、ゆめウェーブがどのようにテクノロジーを放送の現場に活用しているかをご紹介しています。

今回は「AI天気予報」の中編です。前回の予告通り、無味乾燥な気象データといかに格闘したかをお話しします。


天気予報は「楽勝」だと思っていた


実は私、開発前は「交通情報よりも天気予報のほうが圧倒的に簡単だろう」と思っていました。

人間の新人パーソナリティを教育する際も、天気予報は「記入式天気予報シート」を使って型さえ覚えてしまえば、読む項目がはっきりしているため習得しやすいという実感があったからです。 交通情報は時間帯によって件数が大きく増減しますし、何より無限と思えるほどの「初見の交差点名」が登場するため、現地まで看板を見に行くこともあるほどですから。


「型が決まっているなら、AIにとっては天気予報なんて楽勝だろう」


しかし、このイメージは「AI天気予報」に関しては、まったく当てはまらないことを思い知らされることになります。



(生放送で使用する”天気予報記入シート”の例)


「天気予報」が読めない!立ちはだかる「間」の壁


気象庁などから発表されるデータのうち、「警報・注意報」や「概況」は文章になっているので、AIでもまずまず問題なく読めます。 ところが、肝心の「天気予報」のパートになると、途端にハチャメチャになります。


なぜなら、気象庁から発表されるデータは、必要事項が「単語の箇条書き」で表現されているからです。人間のアナウンサーは、この単語の羅列を頭の中で常識的な感覚に変換し、助詞や句読点を補って(読み替えて)話しています。 しかし、AIはすべて指示をしないと、まともに読んでくれません。「間」がおかしかったり、文章をつなげる部分と流して読む部分がメチャクチャになったりするのです。


例えば、元のデータがこれです。

「今夜 南東の風 後 北東の風 晴れ 波の高さ 0.5メートル」

人間の感覚なら、こう読んでほしいわけです。

「今夜は、南東の風、後、北東の風、晴れ。波の高さ 0.5メートル。」

AIは勝手に「は」や「。」を補ってくれません。ルールベースで変換の指示を書いていくのですが、天気には無限のパターンがあるため、なかなか安定しません。

さらに長い文章になると、もっと悲惨なことになります。 例えば、次のようなデータの場合。

【例】「明日は 北東の風 後 南東の風 晴れ 夕方 から くもり 所により 昼過ぎ から 雨 で 雷を伴う 波の高さ 0.5メートル」

人間なら自然に「〜雨で、雷を伴うでしょう。」と読みます。 AIに「晴れ」や「雨」の後に句読点の「。」を入れるルールを設定すればいいんじゃない?と思うわけですが、それをやると、

「昼過ぎ から 雨。で、」

となり、とてつもなく不自然な日本語が爆誕してしまうのです。


最初は開発の猶予(時間)もなかったため、「もう、とりあえず意味が伝わればいいや」と、ラジオ局のスタッフとしてはあるまじき割り切り(かっこよく言うとトレードオフ)をしつつ、とにかく完成を急ぎ、なんとか5月からの運用開始にこぎつけました。

禁断の「公開実験」と、想像を絶する読み間違い


運用開始後も、苦難は続きます。 不自然な読み方がオンエアで流れるたびに、裏側でプログラムを修正していく日々。もはや「公開実験」です。


私がこの仕事を始めた頃は、先輩から「放送で実験をしてはいけない」と強く指導されたものですが、もう時代は違うのだと割り切りました(笑)。


とにかくAIの読み間違いは想像を絶します。 「晴れ」を時々「ばれ」と濁音を付けてみたり、「雨」を「う」と読んだり……。 「雷雨」も当然のように「らいう」と読んでくれないので、わざわざ辞書機能を作って登録するなど、文字通り「日々成長」の状態です。


それでも、現場で修正を繰り返しながら1か月ほど運用すると、だいぶマシになりました。残念ながらアクセントについては、思った通りにならない場所もあり、一部は割り切っています。


【裏側公開】AIを教育するスクリプトの正体


参考までに、スクリプトの裏側では、AIの音声合成エンジンに少しでも自然に読ませるために、こんな涙ぐましい変換を行っています。


(元の気象データ)

今夜 南東の風 後 北東の風 晴れ 波の高さ 0.5メートル 明日は 北東の風 後 南東の風 晴れ 夕方 から くもり 所により 昼過ぎ から 雨 で 雷を伴う 波の高さ 0.5メートル 明後日は 南西の風 後 南の風 くもり 波の高さ 0.5メートル

(AIに流し込むための「読み替え」データ)

今夜、南東のかぜ、の地、北東のかぜ、「はれ」。 波の高さは 0.5メートル。 明日は、北東のかぜ、の地、南東のかぜ、「はれ」。 夕方から**「曇り」。 所により、昼過ぎから「雨」で、かみなりを伴うでしょう。 波の高さは 0.5メートル。 明後日は南西のかぜ、の地**、南のかぜ、「曇り」。 波の高さは 0.5メートル。

お分かりいただけますでしょうか。 「風」を「かぜ」と平仮名にし、「後(のち)」を正しいアクセントで読ませるためにあえて「の地」に変換。さらに天気の単語をカギ括弧「」で囲むことで、なんとか人間らしい「間」を作っているのです。


今回は特別に、この苦難の結果がわかるサンプル動画をご用意しました。 私たちの「新人AI」の奮闘ぶりを、ぜひお聴きください!


●2026年8月25日のバージョン



●2026年3月時点のプロトタイプ


bottom of page